古都の道場 西向き間借り

まとまったことをちゃんと書くために。(まとまってないこと:Twitter→@Picassophia)

原因と責任——無自覚の科学主義

自分の研究と併せて、多くの人に知ってもらいたい、考えてもらいたいことについて書いてみた。長い叙述につきあいきれないという方は、「原因に責任を負わせるということ」だけでも読んでいただけたらと思う。 日本学術会議によせて 世界の立ち現れそれ自体…

依存症の超越論的弁証

健康増進法の改正に伴ってますます人々は実体の見えない「健康」を志向し、嫌煙を正当に喧伝するようになってきている。 煙草や酒は「大人」の嗜みである。「大人」であるとは、法令上成人していることを言うのではない。法令上の成人のみが「大人」であると…

仮定法への拘泥と自慰

旧友とオフを過ごしてそのまま避暑地で仕事をさせてもらうつもりだったが、直前に体調に異変を感じて結局断念してしまった。 幸い特に体調が悪化するとかいうこともなく(ただ慢性的な怠さが少しある、多分軽い熱中症だと思う)、今日は一日ゆっくり休んでみ…

語学における方向

連休が終わる。 この連休は珍しく、少し旅路に出たり旧友に会ったりと、「休日」らしい休日を過ごした。いつも拡張された研究時間として与えられるものから「研究」を取り除くとこういう景色でものが見えるのか、と改めて感じた。そういう精神状態で連休を迎…

インテリと大衆の間の怨恨に

なにかがおかしい。 いったいなにがおかしいのか。なにが拗れているのか。 Twitterで意識的に日常に抑揚をつけるようになってから、昔の仲間と「つながる」ためだけに使っていたアカウントはだんだん使わなくなっていった。 それどころか、そこで流れてくる…

断絶する解答——教育のデジタル化の只中で

知人からオンライン授業のことについて質問を受けた。 今回の騒動の中で、ほぼ全国一律に教育機関におけるICTの導入と整備、そしてその全面的な利用とが実現している。もっとも緊急事態宣言の解除された現在では対面形式への移行がなされており、再びその全…

語学と哲学

カッシーラーの『実体概念の関数概念』を読み終えるまでもう一息というところまで来た。この思想家に対する期待はいま、とても高い。自分の周辺でも、再検討の流れが見えるのは喜ばしい。 彼は「関数=機能」Funktion による基礎付けを志向する。Funktion 以…

雨と鬱屈

とにかく雨の日はつらい。後頭部に糸をつけられてひっぱられるような感覚がある。肩に圧力を感じる。額はぐるぐるする。音を聴いたり、匂いを嗅いだりするとさらにひどくなる。耳の上あたりからぐぁんぐぁんと頭が痛くなる。世界が回っているような気がする…

五月病の後で

今年度が始まってから今日で丸2ヶ月が経とうとしている。ただただ胸に穴の空いたような気分になるばかりである。 研究の進捗は極めてよろしくない。 この二ヶ月間、外出を控えてひたすらルーティンワークをこなす日々だった。 特に力を入れたのは語学だ。 …

遠隔で授業する

高校でも大学でもオンライン授業が始まった。 いずれにせよ自分は統括や企画、つまり授業する側のポジションがほとんどで、やる側としての苦難に日々悩まされている。 特に厄介なのは高校での授業である。 オンラインにおける教育では、基本的に「一方向的な…

「家族」というコンプレックス

連日苦手な事務仕事に追われてなかなか研究に向き合えず、だいぶ疲れている。 その上今朝は頗るおぞましいものを垣間見て、ひどく参ってしまった。 今日は仕事はダメだ、と思ってヘーゲルとフランス語を少し読んだ後、研究もせず寝ながら『オデュッセイア』…

修羅道に堕ちること

コロナ騒ぎと政府の対応で日本中が大混乱になっている。 今日も今日とて翻訳作業をしなければならないのだが、あまりに集中できないし落ち着かないので思い切ってのんびり過ごすことにした。普段土日祝日返上で研究活動に従事しているのだから、平日の一日に…

Essai divertissant sur l'étude de la philosophie au ⅩⅩe siècle

単調な毎日が続いているので、気晴らしに進捗を描いてみることにした。 本当に毎日同じようなことばかりしている。 先々週くらいに今年度の大きな論文が無事通過したのでほっとして次の仕事の準備を始めた。 といっても論文自体はかなり前に出来上がっていて…

上田閑照を読み始める

少し思ったことがあり、Twitterで書くには少し冗長になる気がしたので、こちらに書く。 私が研究している西田幾多郎は、ちょうど1945年、敗戦の直前に亡くなった。 彼を中心に形成された「京都学派」は時局的な問題にも関わっており、かなりデリケートなイデ…

中納言への生成変化とその破壊——『枕草子』の映像性

教材で『枕草子』を使うことになった。 みんな大好き(?)春はあけぼのやうやう…ではなく、「中納言参りたまひて…」という入りから始まる、とても短いお話だ。以下に全文を引用しておこう。 中納言参りたまひて、御扇奉らせたまふに、 「隆家こそいみじき骨…