古都の道場 西向き間借り

まとまったことをちゃんと書くために。(まとまってないこと:Twitter→@Picassophia)

生成AIの形而上学・生成AIの倫理学

授業時間内に、講義の総まとめとしてレポートを書かせていたら、一部の学生が熱心にスマホの画面をスクロールさせている。漢字や内容でも調べているのかと思いきや、どうやらChatGPTを使っているらしい。 細かい利用法までは見えなかったので、特に注意とか…

而立を前にして

正月帰省からの帰路。本を読む気にもなれないし、ネットを見ていても嫌な気持ちになるので、電車に揺られながら眠る妻を片目に書く。 帰省すると、嫌でも過去を思い出すことになる。 過去というのは重い。どこまで行っても拭い去れない。過去というものは過…

まだ見えてないものに手を伸ばすようなものを書く

年末。 一週間の休みで、年度末までの授業準備、論文の執筆修正、イベントの準備、大掃除、帰省と、やるべき仕事は多い。 が、なによりも毎日学生対応や授業に追われる日常から離れられるという意味で、少し心に余裕はできる。 昨日は大掃除で、今日は午後か…

牛歩に抗う

今日は授業も研究会もないため、休日にして家で休んだ。 数日前から咳が続いている。怠いとか熱っぽいとかそういうのがないので、とりあえずは問題ないが、たまに喉に来るようなタイプのひどい咳が出て辛い。 授業も研究も決してゆとりがあるとは言えないが…

焦燥とは無縁の、スピード

明日から早速後期の授業が始まる。 この上半期は、生活様式がガラッと変わって、色々適応に手間取った。あるいはその結果かもしれないが、ここ数週間で風邪を引いて寝込むということもあった。 総合的に見て自分の身の上に幸を感じる日々であることは間違い…

分かり合えないことと芸術

前の記事を読み返して、我ながらよく描けているなと思った。自分は、誰に向けて書くでもなく、永遠に向けて、しかし外へ自分を描くということをするときが一番ものごとをちゃんと描けるような気がする。それは特定の個人に向けたメッセージではない。人間に…

イデアを見る

英雄ポロネーズで、だんだん目が冴えてくる。 ときどきこの時間の流れ自体が、どこかの誰かの記憶とつながるような気がする。 何の煩わしい喧騒も疑心もない生活。それは営まれるべき生活ではないが、瞬間として存在するような生活である。仲の良い友人も家…

日本と応用倫理学

後期の授業準備の一環で、加藤尚武を読んでいる。 「日本での生命倫理学のはじまり」(2007)という短論文があって、これが加藤倫理学の一面を照らしているように見えるので、少し書いて所感を整理したい。 加藤はヘーゲル研究者から日本応用倫理学の先達とな…

推論と直観

デカルトの『省察』を読んでいて、現代人の日常についてふと考えた。通俗的な現代人に欠けている知的習慣とは何だろうか、それは推論ではないか、というようなことだ。 「推論」よりも「推理」という言葉が馴染み深いのは、ミステリー小説や漫画の影響力にも…

哲学者の仕事に寄せて

終戦日。台風で、予定していた帰省が滞り、家でじっと過ごした。怒涛の忙しい日々が束の間の落ち着きを見せて、じっくり休んでいる。 先日は気心の知れた旧友とキャンプで久闊を叙した。この年になると、色々と生活や家庭のことを考える。そう大きな夢も語っ…

哲学の過激さ——哲学対話に寄せて

縁あって哲学対話型の研究会に参加させていただいた。 まったく未経験というわけでもなかったが、それでもほぼ馴染みのない環境だったので、色々興味深く、また普段あまり自分が交流することのないタイプの方々にお目にかかることができる良い機会になった。…

論理と倫理

最近、倫理的なものや社会的なものについて考える機会が多く、それらに対してどういう態度をとるべきか、ということをおぼろげに考えている。 身近な話で言えば、来年度から倫理の専任になるという件がある。倫理学の専門家ではないから、これからディシプリ…

人文知糾弾について

年末。来年度の生活環境のために色々と動くことが多い。集中して仕事として出すべきものはあらかた作り終えたので、あとは締切に合わせて動かすだけのものばかりだが、そういう状況は仕事をしていないという感覚なので、なかなかにもどかしい。かと言って、…

一方的な賞賛に対する居心地の悪さについて

先行きの見えなかった道が、なんとか拓けた。 それは非常に悦ばしいことであって、めでたいことであり、また誇らしく思うべきところでもある。実際この一ヶ月の間で、多くの人に賞賛され、承認されるのを感じた。それは素直に嬉しさに満たされることではある…

進展

延期してもらえた面接が終わって、その日のうちに有難い連絡をいただいた。 一時は望みも全く潰えたと思っていたのだから、本当に嬉しい。 その反動で、後遺症の風邪症状が一気に悪化してしまった。明日から職場復帰だ。今日はゆっくり休むことにする。

因果と善悪、偶然性の問題

喉が焼けるような夜だった。空腹時にロキソニンを飲むのには抵抗があった。ネットの記事で胃が荒れたりしやすいと書いていたから。しかし、眠れない長い夜と耐え難い痛みに押し負けて、一錠飲み込んで眠りについた。 前回の記事を書いてまもなく、怠さに呼応…

岐路の前

誰も見ていないだろうから、それでいてほんの僅かな誰かに見てほしいから、ここに書くことにする。 夏休みが終わって、新学期が始まった。授業は授業として手を抜いているつもりは全くないが、それでも生徒たちには悪いことに、この一週間は自分は心ここにあ…

対象への議論

参院選が近づいてきて、Twitterのタイムラインが政治色を強く帯びてきた。この手の話題は頗る苦手だ。 第一、不可解なことが多すぎる。経験と現実の差異、と言うべきだろうか。自分の周りでこれだけの人が「今の政治はおかしい、選挙に行くべきだ」と言って…

内省

先ほど記事を書いてとりあえず仕事をした気になって、昼間はずっとベッドで過ごした。気に病むことがある以上、休むしかない。気力もないし、明日からまた仕事なのだから休めるだけ休んだほうがよい。そう思って昼食を食べたらすぐにカーテンを閉めた。 少し…

田辺研究のこれからについて

人生でそうそう起こることのないド偉い過ちを犯してしまった。最近は本当に反省が必要だ、ということを思う。自ずから然る生き方、自由を考える中で、出過ぎたことをしてしまっているような気持ちにもなる。浮ついたことを考える前に、善く生きなければなら…

成長

ひとまず戻ってきて、特に恐ろしいことは起こっていない。ただ、宿泊した夜はうなされて眠れなくてほとほとまいった。その後も発熱を伴わない慢性的なだるさが続いている。新年度だというのに、幸先が悪い。心身も弱る。 一と多。普遍と個別。この結合をどの…

桜の背後の桃へ

コロナ以来、ひさびさに祖父母の家に一人で来た。 色々考えることがある。 例えば自分が今、コロナを持っているとして、この機会のせいで祖父母がコロナになってしまったら、とか。 生来の神経症なので、そんなことを考えていると本当に体調が悪くなる。コロ…

進捗

年が明けてからあっという間に一ヶ月が経ってしまった。 経験則だが、特に大きな進捗がないときは大抵時間の流れが速い。というより、あっという間に過ぎ去っていく中で己の成したことのあまりの少なさに絶望するというのが一つの流れになっている。 実際こ…

今日は最後の大学日。あと30分程度で家を出る。これが済んだら年末に知己と過ごす。 掃除を終えることができた。それなりに整えたが、依然として本の多さは変わらない。増える一方だ。せめて使いやすく、また汚くならないようにした。あとはWorkflowyなどの…

権威と完全な静止

机を前にする。席につく。文字をしたためる。 労いに鳥羽の方まで羽を休めに行って、昨晩帰ってきた。今日は掃除をするつもりだが、いざ朝を迎えてみると寒さが辛くて、のそのそと起きて朝食をとりながら結局いつものように悠長に本を読んでしまっていた。 …

ロマンチックに、音楽を聴くように耳を傾けること——『夢十夜』第一夜

今年のofficialな仕事が一通り片付いてほっとしている。あとはぼちぼち自分の仕事をしながら年末にかけて一年の疲れをゆっくり癒そうかな、と思う。 と言いながらもついつい仕事をしてしまうもので、教材研究の一環で漱石の『夢十夜』を読み返していた。 『…

「日本哲学」にこだわる理由

今日は自宅に篭って自分の研究を進める日。と言いつつ、事務的なことを済ませたり、週末の準備をしたりと、結局この時間まで研究らしい研究ということができなかった。今から頑張るわけだが、すんなり研究に入る気にもなれないので、少し書いてみることにす…

冬のノスタルジー

昨日採点業務が終わって、レポートも一通りチェックした。 あとやることは来週の発表準備と翻訳、そして年度末報告書のため研究だ。 ともかく色々落ち着いてきた。それに合わせて、いろんなことを感じる。冬は冬のノスタルジーがある。今日は雨だったので最…

夢日記

7時半起床。頗る嫌な夢を見た。 連日の授業準備や企画もひとまず落ち着き、喫緊の締め切り仕事も一旦片がついて、少し落ち着いて研究ができる、あるいは余裕があるはずだったのが昨日だ。少なくとも月曜の夜まではそう思っていた。 だが、実際は起きてフッサ…

西田、田辺と下村の間で思うこと

連日原稿の修正やテストの採点、成績処理、大学入試の対策、授業準備、研究費の申請書などで落ち着かなかった。ようやく一息ついて(正確にはまだ全然一息ついてないが)、午前の研究をする時間を得た。それでいつも通りフッサールと初期シェリング・ヘーゲ…